ハラスメント対策の導入事例・実績一覧鹿島建設株式会社 様

導入事例鹿島建設株式会社 様

メンタルヘルスに加え、セクハラ・パワハラへの対策を強化

さらなるハラスメント減をめざす

メンタルヘルスに加え、セクハラ・パワハラへの対策を強化
鹿島建設株式会社 様
  • ハラスメント
  • セクハラ
  • パワハラ
  • メンタルヘルス・コミュニケーション
  • 提供サービス研修 相談窓口 教材
  • 規模千人~1万人未満

人事部 部長 ダイバーシティ推進担当 土山 淳子 様
人事部 人事二課長 笠 裕治 様

【長時間労働でストレスがたまりやすい一面も】

鹿島建設株式会社は建設業で、聞き慣れた言葉でいうと“ゼネコン”というところです。代表的なものとしては、昔から純国産のアーチダム、霞が関ビルなど、近年では羽田空港の新滑走路や新国際線ターミナルなどを手がけております。売上構成としてはまだまだ国内が中心ですが、海外でも20カ国以上で工事をさせていただいております。従業員数は正社員が8452名、平均年齢は43.9歳(男性44.6歳、女性39.6歳)で、あまり若くはないという感じです。契約社員(有期雇用者)を合わせると従業員数は1万人を超えますが、男女比は圧倒的に男性が多く、8割強を占めています。

国内には本社のほか、各地方に12支店、そして2000カ所あまりの現場を抱えています。従業員のうち7500名弱くらいが国内の各支店に、3000名くらいが海外支店を含めて本社機構に所属しています。当社は、支店及び現場単位で利益管理を行う独立採算制を取っており、支店長や現場所長の権限が比較的強いといった特徴があります。工期は、建築系が1~2年、土木系は長期のもので5年くらいですが、それぞれの現場ごとにメンバーが入れ替わるのも建設業の特徴で、つらい人間関係が生じた場合でも「この現場さえ終われば」という考え方ができる一方、工期を守るために長時間労働になることも多く、ストレスがたまりやすい一面もあります。

【嘱託医のアドバイスを受け、相談窓口を拡充】

当社では、20年ほど前に本社の嘱託医である精神科の先生から、「メンタル疾患の社員が少し増えてきているので、対策をとったほうがよいのでは」というご提案をいただき、それを受けて1992年にクオレ社に外部の電話相談窓口「心のほっとテレホン」をお願いすることにしました。

1999年には男女雇用機会均等法にセクシュアル・ハラスメント防止が盛り込まれ、クオレ社にはセクハラ(セクシャルハラスメント)に関する相談も受けていただくことにしました。また本社および各支店にセクハラ相談窓口を新設することになり、各支店の男性と女性の相談窓口担当者に対して、「どのように対応していかなければならないか」といった最初のノウハウをクオレ社に研修していただきました。あわせて就業規則にもセクハラ禁止の条文を追加し、2002年にはパワハラ(パワーハラスメント)禁止の条文も追加しています。

相談窓口は本社、各支店、外部のほかに、社員組合も相談を受けることができ、基本的には支店所属者は支店の相談窓口を利用することになっていますが、相談者はこの4つの中で自分が相談しやすいところに相談できるようになっています。本社は本社所属者からの相談を受けるだけでなく、支店で解決できない問題が生じた場合の支援を行っています。また社外相談窓口をお願いしているクオレ社には、月に1回ご来社いただき、1カ月の活動状況を報告していただいており、相談者が匿名希望の場合は相談内容を中心にご説明を受け、実名の場合は本社に相談することを勧めていただいた上で、会社としてきちんと対応するようにしています。

【各層への研修を通して、ハラスメント防止を啓発】

ハラスメント防止のための研修については、新入社員研修、事務系の年次教育研修、管理職研修など、各層・各職種において定期的に行っており、支店でも独自に研修会を企画・運営しています。また不定期開催として、クオレ岡田社長にハラスメント防止についてご講義をいただいております。

本社に現場の所長だけを集めてパワハラの研修を行ったこともあり、所長たちは最初びくびくしながら参加していましたが、研修後のアンケートを見ると、「所長クラスだけでなく、こういった研修をもっと若い層にも行うべきだと思った」という意見が書かれていました。

たしかにセクハラは受けた側が「嫌だ」と思うところにキーがありますが、パワハラについては必ずしもそうではありません。「これもあれもパワハラになる」と強調するだけでは管理する側を萎縮させてしまいます。最近では、評価者のスキルアップ研修でもハラスメントについての講義を取り入れるようにしており、とくに40代のこれから本格的に多くの部下をもつ方に向けて、部下への指導は上司の義務であり、セクハラとパワハラを混合せず、正しく指導を行うことが必要であることを、お話しするようにしています。

【あからさまなセクハラは過去のものに】

これもクオレ社のお力をいただき、セクハラ、パワハラ防止のためのガイドブックもそれぞれ作成しています。どういうことがハラスメントにあたるのかだけではなく、受ける側に対しても、ハラスメント被害を受けないための注意点などが詳しく記載されています。また社内のイントラネット上のハラスメント防止のサイトを改定し、ガイドブックの電子版を掲載した他に、ハラスメントの定義や相談窓口、相談者保護などがよりわかりやすいようにしました。

これらの取組の効果として、相談窓口に対する認知度は上がっており、アンケート調査では90%を超える社員から「知っている」という回答をいただいています。相談件数については、各支店内で解決している分は本社に上がってこないので、会社全体としての数は把握していませんが、もともと年間で10数件~一桁程度であったものが、減少傾向にあるといった状況です。

相談内容については、10~15年前は例えばタクシーの中で触られたとか、無理やりチークダンスを踊らされたといった内容でしたが、そういったあからさまなセクハラ行為はなくなり、当時を知る者からすると、今の女性社員はより過ごしやすい職場環境で働くことができているように思います。ただ最近は、もともと悩みを抱えた者がハラスメントが原因で心の病気になったしまうケースや、「恋愛のこじれ」ではないかと疑うようなハラスメントが原因なのか判然としないケースがあり、対応する上で新たな難しさを感じています。

【研修は繰り返し行うことが必要】

一昔前のようなあからさまなセクハラはなくなりましたが、「まだまだ男女間で受け止め方が異なるな」と感じることはあります。ある現場で環境型のセクシュアル・ハラスメントが生じ、協力会社の女性社員の方が「精神的なダメージを受けた」と現場に申し出たのですが、現場の認識が甘かったところがあり対応が遅れてしまいました。女性は訴訟に持ち込むとまで言い出し、そこで私どもが直接お話を伺いに行き、「社員教育をしっかり行います」とお応えして、解決したという事例もありました。

ただ現場は国内に2000カ所以上あり、研修をどう行き渡らせるかが課題になるのですが、クオレ社に力を貸していただきながら、e‐ラーニングという形で全社員がパソコンに向かって受けられる研修を検討しています。これからの課題としては、メンタルヘルス推進担当者への教育、派遣社員・契約社員の方へのフォローなどに取り組まなければならないと考えております。また、支店によってはハラスメント防止の取り組みが遅れているところもあるので、本社からの支援の必要性を感じています。相談件数は減少傾向にありますが、対策はまだまだ十分ではなく、ハラスメント防止に特効薬はないと実感しています。研修なども一度やったら終わりではなく、社員一人ひとりの意識を高めるために繰り返し行っていくことが重要だと考えています。

- 弊社 岡田康子より -

鹿島建設様とは、私どもの会社設立当初からのお付き合いで、メンタルヘルスの社外相談窓口としてスタートし、現在はハラスメント防止研修などもさせていただいております。相談窓口を開設した当時、メンタルヘルス相談は非常に珍しく先駆的で、これにより鹿島建設様はいろいろなところから表彰された実績をお持ちです。特筆すべき点としては、社員のご家族からの相談も受けておられることで、これはメンタル相談として重要なことだと思います。

鹿島建設様は国内に12支店をお持ちですが、支店ごとに地域性があり雰囲気も異なるので、セクハラ研修をさせていただく際は、事前に社員構成や具体的な事例をお聞きして、その支店にぴたっと合った内容にしています。またパワハラ研修においては、「研修のあとに管理者が弱腰になっては困る」という話をよくお聞きするので、「叱るべきところは叱る」を押さえながら、パワハラになってしまう問題点を意見交換しながら考えていただくようにしています。

中には仕事に一生懸命なあまり、結果としてハラスメントの加害者になってしまったという方もおり、そういう人材を失うのは企業にとっても大きな損失です。また場合によっては命に関わる事態にもなり兼ねないので、本当に重要な役割を担わせていただいていると実感しています。

〔2012年現在〕

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