アーカイブハラスメント問題

ハラスメント問題第15回 その‘習慣’ 見直してみませんか?

こちらのアーカイブは、職場のハラスメントに関する解説を事例などを交えて記載しています。パワハラ・セクハラ防止研修の教材や職場におけるハラスメント防止の啓発ツールとして、出典を明記の上、ご活用ください。
(出典記載例:株式会社クオレ・シー・キューブホームページ)

中央労働災害防止協会発行の 【安全衛生のひろば】に掲載された記事をお届けします。

事例に学ぶ 人間関係のトラブル

第15回 その‘習慣’ 見直してみませんか?

「どうなってるの?」、と矢内美江さん(仮名、30代)は当惑し、途方に暮れている。営業畑で10年近く仕事をした後、自ら異動を希望して総務部へ配転されたのが昨年秋のこと。新天地は総勢8名(内女性6名)のこじんまりまとまった職場で、当初は「家庭的な雰囲気も悪くない」と心地良く感じていた。しかし、男性ばかりの営業チームの会議の際、「お茶持ってきて」、「コーヒーの方が良いな」などの注文に文句一つ言わず、時に残業もいとわず快く応じる女性同僚たちの姿を見て、カルチャーショックを受けた。「これって私たちの業務ではないと思う」と言う矢内さんに返ってきた言葉は、さらに意外なものだった。「女性社員の業務として代々、引き継いでやっている」。以来半年、矢内さんは女性社員の中で浮いた存在となり、最近は「営業から来たからって偉そうに…」との陰口まで聞こえてくるに至った。

異動の時期は見直しの好機

どこの職場にも多かれ少なかれ、“慣習”や“伝統”の業務があるでしょう。それらは理屈や疑いを挟む余地なく綿々と引き継がれてきたため、内で働いている人たちにとっては“当たり前”で抵抗がなくても、外の人間には違和感が強く受け入れられないと感じるものもあります。矢内さんのケースが、まさにそうでした。もともと、「お茶汲みは女の仕事」という意識から生まれた業務だったのかもしれませんが、本来業務に支障がなく、かつ当事者間の関係が良好であるかぎり、「それくらいのことやりますよ」というサービス感覚でこなせる業務でもあります。一方、客観的な第三者の視点からは疑問をもたざるを得ないのもうなずけますし、異なる見方や意見が生じた時、多数派が少数派を排除することも大きな問題です。

長年慣れ親しんだものを変えたり、新たに何かを取り入れたりするには勇気が必要です。人が動き入れ替わる時期、ざっくばらんな意見交換の場を作ることで、“慣習”や“伝統”を見直す好機に変えることができるのではないでしょうか。窓を閉じて新鮮な空気を取り入れようとしないのは、実にもったいないことです。

*当原稿は、中央労働災害防止協会発行【安全衛生のひろば】2011年3月に掲載されたものです。

カウンセラー 志村 翠

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