アーカイブハラスメント問題

ハラスメント問題第16回 女性社員の間で起こったトラブル

こちらのアーカイブは、職場のハラスメントに関する解説を事例などを交えて記載しています。パワハラ・セクハラ防止研修の教材や職場におけるハラスメント防止の啓発ツールとして、出典を明記の上、ご活用ください。
(出典記載例:株式会社クオレ・シー・キューブホームページ)

事例に学ぶ 人間関係のトラブル

第16回 女性社員の間で起こったトラブル

給湯室から聞こえてくる会話の主は、総合商社総務課入社3年目の成田保美さん(仮名、20代)。この春入った新人女性社員たちに、おどけた調子でアドバイスしているのだ。「…だからね、お局様の言うことに逆らうと大変」、「何でも『ハイ、ハイ』って聞いていればいいのよ」。業務を隅々まで把握し、誰からも一目おかれる小宮山智子さん(仮名、30代)は、自分の噂話を耳にするのには慣れている。毎年、新人教育を担当する小宮山さんだが、「こんなことも知らないの?」、「しっかりしてよ」が口癖になり、最近は「まったく最近の若い子って…」とため息が出るようになった。課長の高島守さん(仮名、40代)から「分からないことは小宮山君に聞きながらやってくれ」と、資料作りを指示され、質問に来た成田さんを「それくらい分からないでどうするの?!」と一蹴した小宮山さん。その場で成田さんは泣き出し、高島課長の元へ駆け込んだ。

偏見や先入観はありませんか?

“主(ぬし)”あるいは“お局様”などと綽名される物知りでベテランの社員は、どこの職場でもみかける存在でしょう。しかし、その呼び名は決して好意的とは言えず、むしろ悪意をもって揶揄される場合が多いはずです。女性社員が寿退社するまでの腰掛け的存在であった時代に、職場に“長居”した人たちを称していたのですから、ハラスメント臭芬々たるものがあるのは当然です。

小宮山さんの例では、女性が女性を互いに敵対し排除しようとする心理、パワーを味方につけようとする心理が複雑に絡んで、職場内の空気を停滞させるばかりか作業効率を著しく低下させています。元凶は個人の中にある偏見や先入観です。小宮山さんは“最近の若い女性”を、成田さんや新人女性は小宮山さんを、自分の目で見ておらず、噂やイメージのフィルターを通してしか見ていないのはもったいないことです。フィルターを取り去り、目の前にいる人を一旦受け入れることで新たな関係が展開していくに違いないのですから。

*当原稿は、中央労働災害防止協会発行【安全衛生のひろば】2011年4月号に掲載されたものです。

カウンセラー 志村 翠

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