ハラスメント・インサイト自分は大丈夫?

自分は大丈夫?

『ハラスメント・インサイト』は、厚労省や人事院のハラスメントに関する委員会メンバーを歴任してきた弊社取締役・稲尾 和泉による連載です。
今日、人権やジェンダー、雇用形態、雇用環境、経営問題、心理、人間関係など様々な問題と複雑に絡み合っているハラスメント問題に関するインサイト(洞察)を読み解き、今、職場づくりで求められていることを、ハラスメント対策の切り口として示して参ります。

これまでの連載はこちらをご覧ください。

先日電車に乗っていて、とても印象的な広告を見つけました。

ポスター

こちらは一般社団法人日本民営鉄道協会が2023年10月から2か月間掲示したポスターで、TVでもそのCMを見かけました。「自分は絶対守れてるって実はみんなが思ってる」というキャッチコピーも鮮やかです。

ハラスメント問題についても、同じことが言えます。ハラスメント防止研修でディスカッションを行ったあと、発表をお願いすることがよくあるのですが、模範的な回答をする人が実は行為者であった、と後から知らされることは一度や二度ではありません。しかし、これは人間の限界を表しているように思えてなりません。誰であっても、客観的に見れば「こういう行為はよくない」とわかっていても、自分の言動については無自覚なことが多いものです。このポスターは、それを見事に表していると思います。

自分だけは大丈夫、自分はそんなことはしていない、というのはある種のおまじないのようなものだと思います。誰しも少しずつ誰かに迷惑をかけて生きているものですが、「自分は周囲に迷惑をかけている」という思いばかりに目が向いてしまうと、自責の念からうまく社会生活を送れなくなってしまうこともあり得ます。一方で、自分は高みの見物で「あの人はパワハラ体質だから」「あんなひどいことをするなんて、最低だ」と他者批判ばかりしていると、「自分だってひどいことを言っているくせに気づいていないのか」と思われて、職場での信用を失ってしまうこともあります。

自分を責めるでもなく、自分に過信するでもなく職場のメンバーとよい関係を保つには、このポスターにあるようなものの見方に気づけるかどうか、ではないでしょうか。相手から、あるいは他者からどのように見えているのか、教えてもらう機会があること、それを遠慮なく言いあえる信頼関係を作ることが大切です。それこそが、「心理的安全性」のあるチームであり、ハラスメントフリーな職場なのだと考えています。

広告画像出典元:一般社団法人 日本民営鉄道協会 民鉄協ニュース No.8(2023年9月28日)

2023年12月

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