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ハラスメント対策最前線風通しの良い職場づくり -CSR活動の一環として-(4)
CSRと障害者雇用
2013年4月に障害者の法定雇用率が引き上げられました(民間企業: 1.8%→2.0%、国や地方公共団体等:2.1%→2.3%、都道府県などの教育委員会:2.0%→2.2%)。また、今後は精神障害者の雇用義務化も検討されています。
これまで企業で取り組まれてきた障害者雇用の位置づけは、どちらかと言うと自社完結的な「弱者支援」あるいは「国から課される義務」といった消極的なものでした。しかし近年、障害者雇用を重要なCSRとしてとらえる企業が増加しています。社内外を問わず全てのステークホルダーの人権尊重がCSRの射程に入ってきた段階において、障害者雇用はまさにCSRの一環として取り組むべき経営課題です。
障害者への配慮と風通し
ISO26000の社会的責任の7つの原則には、「ステークホルダーの利害の尊重」「人権の尊重」があります。障害者雇用は「弱者支援」ではなく、障害者も「企業や社会に貢献するステークホルダーとしての従業員」ととらえ、企業が自主的に「障害への合理的配慮」を実現することが求められています。
とは言え、もちろん質の高い障害者雇用は口で言うほど簡単に実現できるものではありません。職務の洗い直しや、個々のニーズを聞いた上で障害に合わせた役割分担を行うといった人事管理は当然のこと、他の従業員への教育や従業員同士の関係構築など、包括的できめ細やかな対応が必要です。そしてその鍵となるのは、これまで述べて来たことと同様、対話創出なのです。
障害の状態は個人によって多様であるため、個別具体的な配慮について、企業と障害者従業員、関係者が対話によって問題解決を図る姿勢が不可欠です。また、障害者雇用に積極的に取り組んでいる企業は、「障害のある従業員が能力を発揮できる風土づくりが会社全体の成長につながる」をコンセプトに、風通しのよい職場作りを目指しています。
「風通しのよい職場」と言うとき、そこには個々の障害も含んだ多様性があることが望ましく、その中で一人ひとりの力がさらに発揮されることが、企業の価値創造につながる・・・
これがCSRの本質ではないでしょうか。
(2014年1月)
村松 邦子
経営倫理士
株式会社ウェルネス・システム研究所 代表取締役
筑波大学大学院修士課程修了(人間総合科学)
グローバル企業の広報部長、企業倫理室長、ダイバーシティ推進責任者を経て独立。
「健幸な社員が健全な組織をつくる」をテーマに、人財組織開発と連動したダイバーシティ、企業倫理、CSR推進の支援・普及に取り組んでいる。
「人にやさしい会社~安全・安心、絆の経営~」(白桃書房、2013) 「三方よしに学ぶ 人に好かれる会社」(サンライズ出版、2015) |
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