ハラスメント対策最前線経営倫理とダイバーシティマネジメント(1)

「女性活躍推進」は進んでいますか?

「女性活躍推進法」が8月28日に成立し、企業の「女性活躍」への取り組みが本格化してきました。新法は、企業に女性の採用比率や管理職の割合など数値目標の設定と情報の公開を義務付けるもので、従業員301人以上の組織は、①女性活躍状況の把握と課題分析②数値目標や取組内容などの行動計画策定、周知、公表③女性の活躍に関する情報の公表が求められています。
これを機に、「活躍推進を阻んでいる」と指摘されることが多い「経営トップや管理職の意識改革」が進むことを期待していますが、「ダイバーシティ経営」の本質的な理解がないと、ともすれば数値目標にとらわれ、形だけの取組みになりかねません。皆さんの組織内での反応はいかがでしょうか。

土台になる「経営倫理とダイバーシティ・マネジメント」

ダイバーシティ経営とは、「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」(ダイバーシティ経営企業100選)のことです。企業には、性別、年齢、国籍、障害、雇用形態など、多様な背景や個性を持った従業員が働いています。その「違い」を尊重し、多様性を競争優位の源泉として生かしていくために必要なのが、経営倫理を基盤とした「ダイバーシティ・マネジメント」です。多様な視点を意思決定プロセスに取り入れていくことは、ハラスメント防止、リスク管理、コンプライアンス対策など、健全な組織づくりにもプラスに働きます。

持続可能な成長に向けて

「ダイバーシティ・マネジメント」は、1990年代、「変化への対応」として生まれました。多様な人財活用を成長の源泉とする経営戦略であると同時に、かけがえのない一人の人間としての「人権尊重」の価値観が内包されています。
企業は、今こそ「女性活躍」を試金石とし、人、組織、社会の持続的成長に向けて、変革への第一歩を踏み出すときではないでしょうか。 人と組織の深層に経営倫理の「共感」思想が広がり、一人ひとりが自分らしく輝ける組織となるよう、現状と課題、先進事例などを紹介していきたいと思います。

(2015年10月)

プロフィール

村松 邦子
経営倫理士

株式会社ウェルネス・システム研究所 代表取締役
筑波大学大学院修士課程修了(人間総合科学)

経歴

グ ローバル企業の広報部長、企業倫理室長、ダイバーシティ推進責任者を経て独立。
「健幸な社員が健全な組織をつくる」をテーマに、人財組織開発と連動したダイバーシティ、企業倫理、CSR推進の支援・普及に取り組んでいる。

著書(共著)
「人にやさしい会社~安全・安心、絆の経営~」(白桃書房、2013)
「三方よしに学ぶ 人に好かれる会社」(サンライズ出版、2015)

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