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ハラスメント対策最前線経営倫理とダイバーシティマネジメント(4)
無意識の偏見や差別
皆さんは、「偏見」や「差別」と聞くとどんな印象を持ちますか?「自分には関係ない」「自分はしていない」と思うかもしれません。しかしながら、何の偏見も差別も持たずに生きることはほぼ不可能であり、自分でも気づいていない嫌悪感や、無知から来る思い込みがあると言われています。
カウンセリングの講座などでも、「自分の持っている偏見や差別がどんなものなのかを知っておくことが相手と接する上でとても大事」だと教えられます。「無くそう」とする前に、まず「気づく」というプロセスが必要です。
それでは、どのようにして気づけば良いでしょう。
自己理解の方法には、3つの側面があると言われています。
自己認識を確かめる
以下のようなことを知っておき、ときに自分自身に対して疑いを持つことも偏見や差別を防ぐことの一助となるでしょう。
- 自分の中にも、まだ気づいていない偏見や差別の芽があるかもしれない
- 自分の価値観・思考・持っている情報は、他人のものとは違う可能性がある
- 自分の情報には偏りがある可能性がある
- 人間は自分の経験したことを基に「これが正しい」と考えがちである
他者からのフィードバックを得る
次に、身近な他者から「自分の偏り」を指摘してもらう方法です。
ジョセフ・ルフト (Joseph Luft) とハリー・インガム (Harry Ingham)がモデル化した、通称「ジョ・ハリの窓」と呼ばれるコミュニケーションのモデルがあります。
- 開放の窓:自分も他者も知っている状態
- 秘密の窓:自分は知っているが他者は知らない状態
- 盲点の窓:他者は知っているが自分は知らない状態
- 未知の窓:自分も他者も知らない状態
自分自身を分かってもらえないとか、誤解されていると感じるような場合(秘密の窓)、自分から発信したり誤解を解いていく必要がありますし、相手には見えているけれど自分では明確に気付けていないような無意識での態度や行動(盲点の窓)については、相手から伝えてもらうことが必要です。それには日頃からの信頼関係と、率直なコミュニケーションが大事になります。
客観的データ・テストなどを活用する
自分の偏見や差別に気づくためのデータやテストはまだ多くありませんが、たとえば自分の無意識の部分を明らかにしていくような性格検査や、行動特性を測る検査も活用できます。自分が当たり前だと思っていた世界観や思考・行動の枠組みを、全員が持っているわけではないということを理解すると、自分がいかに「自分自身」という枠の中で生きてきたのかに気づかされます。
自己理解から生まれる他者理解
自己理解が深まると他者理解に繋がると言われますが、なぜでしょうか。
それは、上記の通り、自分を知れば知るほど「自分と他者は違うのだ」ということに気づかされ、そこから「相手をもっと知ろう」と思うようになるからです。よって、私たちが「自分をより深く知る」ためには他者が欠かせませんし、「他者をより深く知る」ためには自己理解が欠かせないという構図になっているのです。
ダイバーシティマネジメントの土台は、お互いに尊重し認め合う信頼関係です。
相手に心を開いて自分のことを知ってもらったり、相手に関心を持って質問し、知らなかった部分を理解しようとお互いが努めることで、偏見や差別も減らすことができます。
一人一人がコミュニケーションを大事にし、他者への理解や異文化への理解を心がけていきましょう
(2016年10月)
村松 邦子
経営倫理士
株式会社ウェルネス・システム研究所 代表取締役
筑波大学大学院修士課程修了(人間総合科学)
グ ローバル企業の広報部長、企業倫理室長、ダイバーシティ推進責任者を経て独立。
「健幸な社員が健全な組織をつくる」をテーマに、人財組織開発と連動したダイバーシティ、企業倫理、CSR推進の支援・普及に取り組んでいる。
「人にやさしい会社~安全・安心、絆の経営~」(白桃書房、2013) 「三方よしに学ぶ 人に好かれる会社」(サンライズ出版、2015) |
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