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ハラスメント対策最前線経営倫理とダイバーシティマネジメント(8)
「自分ごと」で考えるダイバーシティ&インクルージョン
これまで、ダイバーシティ経営やエシカル・リーダーシップなどについて述べてきましたが、今回は、改めて個人視点のダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)について紹介したいと思います。
「ダイバーシティ」のシンプルな定義は、“人と人との違い”です。性別、人種、年齢などの見える違い、経験、価値観などの見えない違いを含む様々な多様性を意味しています。「インクルージョン」は日本語では「包摂」と訳されますが、一人ひとりが異なる存在として受け入れられ、全体を構成する大切な一人として、その違いが活かされていることをいいます。つまり、多様な存在である私たちがその強みを活かし、弱みを補い合い、認め合えるのがD&Iレベルの高い社会です。
現在の日本の状況として、D&Iという言葉が主に女性活躍推進や障害者雇用などの文脈で語られ、企業の中では取り上げられるようになってきてはいるものの、社会全体としては浸透していないということがあり、その結果、自分が多様性の一部であり、弱者やマイノリティーでもあるという実感がない、特に大企業で働いている人にとってはピンとこないというのが実情のようです。
私が代表理事を務めているNPO法人GEWEL(ジュエル)はD&I推進に長く関わってきていますが、昨年、企業で働く方たちとD&I推進の次の施策を考える機会がありました(注1)。そこで分かったことは、D&Iが、「会社の人事などが主導している、ある特定の人たちのためのもの」という見方をされがちであるということでした。
そこで私たちは、「個人としてのD&Iとはどんなものか?」ということを考えることにしました。その一定の成果が、一人ひとりに「D&Iとは何か」を考えるきっかけとしてもらうための動画(注2)や、下記の図「個人のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)のステップ」です。
ここでは、学校での画一的なルールへの違和感など、身近な題材を元にした「自分らしいとはどんなことか?」ということに焦点を当て、個人の中にある多様性について考えています。
出典:NPO GEWELホームページ 二枚目の名刺「NPOサポートプロジェクト」最終レポート
http://www.gewel.org/2018/01/12/nimaime-pj-report/#more-1188
エンゲージメントにとって必要不可欠なインクルージョン
ダイバーシティの考え方は必ずインクルージョンと対になっており、個人のわがままや怠惰・不正を許すということではありません。
企業や組織にとってのインクルージョンの要は、理念や行動規範、または法的なルール(就業規則、労働法など)、目標管理などになり、個人にとってのインクルージョンは、道徳心や規範、初心、個人の目標になるでしょう。まずはそれらがしっかりと整い、組織全体として浸透しているかどうかをチェックしましょう。
また、企業の観点では、個人との間に交わされた契約を元に、組織の中のルールを個人が適切に守り、パフォーマンスを上げようとすることが前提となって多様性の尊重をするということになりますし、個人の観点で言えば、組織が契約を元に適切に個人のダイバーシティを尊重しながら処遇しようとするときに企業に貢献しようとする気持ちが高まることが考えられます。そういった前提をしっかりと意識し、個人のキャリア自律や、個人と組織との間のコミュニケーションの質や量の向上を目指しましょう。
個人と組織において、お互いの間に折り合うポイントが多ければ多いほど双方においてエンゲージメント(お互いに貢献し合おうとするようなつながり)の構築が図りやすくなり、健全で持続可能な組織にもつながります。
注1:二枚目の名刺「NPOサポートプロジェクト」最終レポート
http://www.gewel.org/2018/01/12/nimaime-pj-report/#more-1188
注2: 動画 https://goo.gl/d8WNYF
(2018年2月)
村松 邦子
経営倫理士
株式会社ウェルネス・システム研究所 代表取締役
筑波大学大学院修士課程修了(人間総合科学)
グ ローバル企業の広報部長、企業倫理室長、ダイバーシティ推進責任者を経て独立。
「健幸な社員が健全な組織をつくる」をテーマに、人財組織開発と連動したダイバーシティ、企業倫理、CSR推進の支援・普及に取り組んでいる。
「人にやさしい会社~安全・安心、絆の経営~」(白桃書房、2013) 「三方よしに学ぶ 人に好かれる会社」(サンライズ出版、2015) |
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