海外ハラスメント問題第1弾「職場のいじめとハラスメント国際学会・参加レポート」

第1弾「職場のいじめとハラスメント国際学会・参加レポート」

クオレ・シー・キューブ代表の岡田康子が2012年6月13日~15日、デンマーク・コペンハーゲンにおいて、職場のいじめとハラスメント国際学会(IAWBH:International Association on Workplace Bullying & Harassment)に参加しました。今年2月に弊社主催の「パワハラ研究会」(有識者グループ)にお招きしたオーストラリアにおけるパワハラ対策の第一人者、エヴリン・フィールド先生より参加の打診があったもので、クオレ・シー・キューブとしては2回目の参加です。

〔職場のいじめとハラスメント国際学会〕について
(外部サイト:http://www.iawbh.org/
職場のいじめとハラスメントの分野において、リサーチと根拠に基づくプラクティス(業務)を活性化し、生み出し、一体化し、そして広めるグループです。
この取り組みを通じ、職場における公正性、正当性、そして尊厳(品位・品格)を促進しようと努めています。
学会は2008年モントリオールで公に発足し、20カ国(オーストラリア、カナダ、インド、日本、メキシコ)からおよそ150人のメンバーで構成されています。
2年毎に世界のどこかで開催され、次回はイタリア・ミラノで2014年に開催される予定です。

今回の学会は3日間にわたり、主にコペンハーゲン大学のキャンパスで基調講演と分科会、そして市役所やホテルなどでのレセプションにより構成されました。
分科会は3日間で22セッションが繰り広げられ、1セッション約2時間で5~6名のスピーカーが発表します。同時刻に4~5セッションが平行して始まるため、参加者は前もって興味のあるテーマを絞り込み、各教室へ出向く格好になります。テーマは、法律・差別・介入・健康・現象・ジェンダー・リスク・コーピング・リーダーシップ・リハビリテーション・予防・パーソナリティ・測定・コスト・傍観者など多岐にわたっていました。概ね、職場のいじめの現状、予防、対策に関する事例や調査研究の結果などについて発表されていました。

岡田は、予防をテーマとした分科会で「日本におけるハラスメント防止対策へのアプローチ」と題して、先般の厚労省の「職場のパワーハラスメント防止提言」をはじめ、精神障がいの労災請求と認定の推移など日本の現状に触れながら、これまでの日本におけるハラスメント対策の動向、またその効果などについて発表して参りました。参加者からは企業との契約の中で被害者救済を行っている活動に興味を持っていただいたようです。また、「日本は厳しい上下関係の中でハラスメントがおきているのではないか」などという質問があり、海外では日本の職場がそう見られているのだと実感しました。今後日本の職場の現状についてもっと発信していく必要性を感じた次第です。

今回の参加者はおよそ200名。コンサルタント、コーチ、調査研究者、精神分析医、臨床医、弁護士、労働組合担当者、組織内相談窓口担当者などが、世界中(イギリス、カナダ、オーストラリア、ノルウェー、スエーデン、デンマーク、オランダ、フランス、トルコ、アイルランド、スペイン、イタリア、アメリカ、日本など)から来ていました。皆さんハラスメントの対策・予防・研究に携わるエキスパートで、誰もが何とかより良い職場をつくりたい、より良い世界を築きたい、という思いに溢れ、自らの仕事に情熱を持つ人たちが集まっていたように感じられました。
分科会の合間やディナーの席などでもそれぞれが積極的に意見交換をしているのが見受けられ、熱いプロフェッショナルたちの集まり、という印象でした。





このシリーズ「海外ハラスメント事情」では、今後、この学会で出会ったそんな熱いハラスメント・プロフェッショナル(ハラスメント防止に携わるプロフェッショナル)たちをご紹介していきたいと思っています。その方の出身国におけるハラスメント事情なども交えてお伝えしていく予定です。

この特集内容に関するご質問やご要望などございましたら、お気軽にお寄せくださいませ。
cuore@cuorec3.co.jp

デンマークにおけるハラスメント関連情報

学会のオープニングでご挨拶された、レナート・ダンスボ・アンダーセン氏(Lennart Damsbo-Andersenデンマーク国会議員・雇用委員会議長)によりますと、デンマークでは2012年はじめから2020年終わりまでに次の3構想を実現させることが2011年3月に決まったそうです。

  • 職場でのシリアスな事故を25%減らす
  • 精神的に負担のかかりすぎている従業員数を20%減らす
  • 筋骨格障害(腰痛など)に悩む従業員数を20%減らす

デンマークは労働環境を整えることに重点を置き、第一次予防がもっとも進んでいる国のひとつとされています。政府上げての労働環境の保全・改善も徹底していて、労働環境監督署の指導の下、定期的にすべての事業所への査察を行うといった取り組みもされています。企業側もまた、従業員の健康を気遣っているというコーポレート・イメージを訴求する機会として積極的に捉え、遂行しているようです。

これらの前提として、デンマークには、国にとって最も大切な資源は“人”であるという考え方が浸透しているということが挙げられると思います。このため、国としても教育や福祉・医療を整備し、人的資源を守り、十分に活用するために労働環境を整えるという、人を大切に育てて役立てるという施策がとられているのだろうと思います。

レポーター クオレ・シー・キューブ 岩崎

(2012年7月)

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