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ハラスメント対策を進める順番

Q当社では、これから本格的にハラスメント対策に取り組んでいきたいと考えています。どのような順番でハラスメント対策を進めていけばいいでしょうか?
Aひとことでハラスメント対策と言っても、何をどこまで実施するかは企業の実情により様々だと思います。ここでは、企業のハラスメント対策の進み具合に応じて導入していただくよう、導入の順番も含めて広くご紹介したいと思います。
  1. 方針の決定及び周知
    まずはハラスメントにどのように取り組むのか、企業の方針を明確にすることが第一段階として挙げられます。ここで、なぜハラスメント対策を行うのか、どのような行為をハラスメントとするのか、具体的な理由を明確にして伝えることで、その後の対策が説得力・拘束力をもつものになります。

    方針を明確に伝える方法として一般的なのは、企業の行動指針などの中にハラスメント防止について盛り込む方法と就業規則の中にハラスメントに関する規定や条項を追加する方法です。

    就業規則について言えば、ハラスメント行為を処分するにあたっての根拠となるものです。その内容が合理的なものでなければなりませんが、企業秩序の維持という側面からいえば、規定することでより大きな防止効果を生むことができると考えます。

    特にセクシュアル・ハラスメントについては就業規則の中に「職場におけるセクシュアル・ハラスメントに関する事項を規定すること」と定められていますので、未整備の場合は早急な対応が必要です。

    いずれにせよ、全従業員がこの方針や就業規則の内容を実効性のあるルールとして、確実に知ることができるやり方で周知することが重要です。特にトップの強いメッセージがあれば、より真剣に受け止められると思います。
  2. 問題解決体制の整備
    方針が決定し、企業としての姿勢が明確になったところで、次に取り組むべきは問題解決体制の整備です。問題解決体制の整備はタイミングが非常に重要です。姿勢を明確にし、従業員に周知をしたところ、ハラスメントについての相談や質問が持ち込まれるのはよくあることです。そのときに問題解決や問題対応についての窓口や対応の流れが決まっていないのでは、迅速な問題解決が望めないどころか、相談者の信用を失うことになりかねません。

    少なくとも社内での相談窓口と担当者、相談方法(面談か電話か電子メールか、匿名でも受け付けるか等)相談後の社内対応フローは決めておく必要があります。

    それ以外にも、広く問題を吸い上げるための社外相談窓口の設置や、対応が難しい案件が発生した場合の相談先(弁護士、産業医、カウンセラー等)の確保、相談窓口担当者の問題対応スキル獲得のための研修などの施策も可能な限り準備することが望まれます。 こういった問題解決体制についても、方針の周知の際に合わせて周知するのが必要です。
  3. 従業員教育
    上述のような体制作りが整った時点で、従業員のハラスメント教育に取り掛かるのが、最も効果的です。会社の方針として、従業員がハラスメント防止に努める義務がある、という枠組みを提示することが、教育研修の動機付けとして重要だからです。

    ここでは、まず会社が規定する、「ハラスメントとして許されない行為とは何か」を理解することが主な目的になります。あわせてそのような行為があった場合の対応窓口など問題解決体制についても情報を提供し、利用促進を促します。

    また、企業の中で注意喚起したいハラスメントの態様に応じて、研修の目的やゴールを絞りこんでいき、それに応じた独自のプログラムを実施することで、よりよい効果が得られるでしょう。

    研修について実施の順番やその他の注意事項については2009年10月のQ&Aをご参照いただければと思います。

    先日ある企業の方が、昨今のハラスメントを原因とする紛争の増加という情勢を踏まえて、「ハラスメント研修は、不用意な発言などから起こる紛争から管理職を守るために実施する」と仰っていたことが印象に残っています。

    企業の秩序維持という目的から、ハラスメントにあたる行動を理解させることで発生の可能性を減らし、それでも起こってしまった問題については速やかに対応し、行為の性質やその結果によっては厳正に対処する。ハラスメントの撲滅にはその仕組みが不可欠であると思います。

(2009年)

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