年内実施?セクハラ労災認定見直し
- Q先日のニュースで、セクハラ(セクシャルハラスメント)の労災基準の見直しが年内を目標に進んでいるとのことですが、具体的にはどのような点が変更になるのでしょうか?
- A2011年6月24日に、厚労省が主催する精神障害の労災認定の基準に関する検討委員会の‘セクシュアルハラスメント事案に係る分科会’で検討された内容がニュースとなり、ご存知の方もいると思います。セクシュアルハラスメントについては、もともと労災認定の基準に入っているにもかかわらず、何故見直しを検討されているのでしょうか。 実は、通常の労災認定に比べると、セクハラによる労災認定に関しては、その申請数が極端に少ないという現状があります。2009年に各都道府県の労働局に入った労働相談はおよそ2万3千件で、セクハラ相談はその過半数を占めていますが、労災の申請数はわずか16件、そのうち労災支給が決定されたものは、わずか4件しかありません。
その背景には、被害者がセクハラ被害を他者に知られたくなかったり、加害者がセクハラ行為を否定して事実認定が難しい等から、セクハラ被害者の労災請求そのものをあきらめたり、労基署における事実関係の調査が困難で認定に至らないといった事情があったのです。そのため2011年2月から、セクハラの労災認定にまつわるそれらの実態を把握した上で、セクハラ被害による精神障がいの労災認定の基準の再検討を行うために分科会を設け、見直しの検討を進めていました。
具体的には、従来セクハラ被害については一律に心理的負荷をⅡとしてきたものを、その被害の程度によってⅢに引き上げたり、Ⅰに下げたりすることになります。また、Ⅲにあたるものよりも上位の概念である‘心理的負荷が極度に該当するもの’として、強姦や本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為が含まれています。この‘本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為’とは、例えば上司から「自分と肉体関係を持たないと辞めさせる」等と脅迫され、やむを得ず性的関係を持った場合等が該当し、強姦も含めたこれらを【特別な出来事】として、その行為を受けただけで心理的負荷を「強」と判断することになります。つまりこれらの出来事が事実と認められた時点で、精神障害の労災認定を受ける可能性があるのです。
その他、心理的負荷をⅢに引き上げるものの例として、継続して行われた身体的接触を含むセクハラや、身体的接触はないが人格否定を含むセクハラが継続された場合があげられます。心理的負荷Ⅲの特徴としては、起こった出来事だけでなく、その後の経過で事態が改善されなかった場合に認定されるという点です。被害者が嫌がっているにもかかわらず性的に侮辱されるような発言を繰り返されれば、Ⅲと評価される場合があります。また、セクハラ行為自体は単発であっても、その後会社の対応が適切でなく、セクハラ言動が改善されなかった場合も、Ⅲと評価するのが望ましいとされています。これは、企業組織のハラスメント相談窓口担当者の対応が、今までにも増して重視されることの表れです。セクハラ相談があっても迅速に対応しなかったり、問題の解決をあいまいにしたりしていると、労災認定の可能性が高まります。
一方、心理的負荷をⅠに引き下げるものの例としては、「○○ちゃん」等のセクハラ発言や職場内に女性の水着のポスターを掲示する、などの項目が含まれています。 厚生労働省によると、分科会によって話し合われた結果について、本会である精神障害の労災認定の基準に関する検討委員会で再度検討し、年内あるいは年度内には新基準として決定した上で、できるだけ早く運用したいとしています。
* その他にも、評価期間、併発する出来事(いじめ嫌がらせ等)、評価表での位置づけなども見直しの対象となっています。詳しくは
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001ggp0.htmlをご覧ください。
(2011年)
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