ハラスメント例(自社で起きたパワハラ具体例)を知りたいとの要望
- Q社内研修で「わが社で起きたパワハラ(パワーハラスメント)の具体例を知りたい」との要望が挙がっているのですが、守秘義務があるので公にはできません。とはいえ、研修効果を高めるためには、ある程度伝える必要もあると思います。どのように伝えればよいでしょうか。
- Aパワハラやセクハラ(セクシャルハラスメント)について、受講生から「具体的にどういうことがダメなのかを知りたい」という要望をいただくことは、珍しくありません。自分なりのパワハラやセクハラの判断基準と具体例を照らし合わせて、今後の部下指導やコミュニケーションに活かしたいと思えば、当然の要望でしょう。
とはいえ、ご質問にもあるように、本当に自社で起こった事例をそのまま研修に使うことは、相談窓口の守秘義務上できません。特に被害者は、「自分のことを他の社員に知られてしまった」と二重で傷ついてしまうことになります。守秘義務に配慮しつつ、研修効果を高める具体例を挙げていくには、どうしたらよいのでしょうか。
弊社が研修の中で具体例をお伝えする場合は、実際のご相談内容をそのまま引用することは、守秘義務上当然ありません。よって、過去に公開電話相談でお受けしていた事例の中から共通のテーマを持つものをいくつか寄せ集めて、ケースの基礎を作ります。その上で、当事者の性別や年齢、職場環境や業種を加工します。さらに、最近起こったハラスメント問題の記事や判決文の内容を加えて、具体例を作り上げていきます。
このように、二重、三重に加工することで、特定のケースとは異なる独自の具体例が創られます。 このように具体例を加工すると「本当の事例でないと参考にならない」という意見をいただくことがありますが、その心配はありません。ハラスメント防止研修で具体例を用いるときに重要なのは、‘具体例を用いて何を学んで欲しいのか’という目的を絞ることです。例えば【暴言以外でも、パワハラとみなされる言動があるのか】を学んで欲しいのか、あるいは【わが社でよくみられる言動はパワハラに該当するのか】を学んで欲しいのかで、具体例の示し方も変わります。
例えば、【暴言以外のパワハラの例】を理解して欲しければ、判例や記事から具体的な言動を10個程度集め、箇条書きにして列挙して示すことができます。その中のいくつかに、自社の具体例に近いものを加工して紹介すれば、「この中にわが社にも実際に相談のあった事例があります。」として伝えることができます。また、箇条書きであれば、よほど特徴的な言い回しや行動がない限り、当事者が特定される心配もありません。
一方、【わが社でよくみられる言動の例】として一つのケースを紹介するときは、そのような言動を含んだ判決文を探し、その判決文に沿った内容で具体例を作っていけば、自社の具体例でなくても目的を達成することができます。私どもが研修用のケースを作るときも、判決文を参考にしています。
判決文の中にあるパワハラやセクハラの言動はとても詳しく、職場の背景やその言動を受けた当事者の心情も読み解くことができます。また、具体的な言動も、驚くほど実際に耳にする被害者の訴えに近いものがたくさん出てきます。
このようなことから考えると、ハラスメント防止研修の担当者はニュース記事や判決文をよく読みこんでおくことが必要です。その上で、自社の具体例との共通項を見つけ、適宜社内研修に盛り込んでいくことで、研修内容のマンネリ化も防ぐことができるでしょう。
(2011年)
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