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ハラスメント相談の現場からVol.23 “パワハラ加害者”という被害者を生まないために
Vol.23 “パワハラ加害者”という被害者を生まないために
2017年は幕開け早々、世界中が固唾を飲んで見守る中、アメリカ新大統領が船出しました。大国のトップがいかなる施策をもって大海へ漕ぎ出すのか、これからも目が離せません。
国であれ企業であれ、トップの価値観、方針、言動スタイルに周囲の人間が右往左往させられるのは洋の東西を問わない理(ことわり)でしょう。トップは自らの影響力の大きさを戒めとともに自覚する任を背負っています。一方の社員は、自らが主体的に行動することにより右往左往の半径が狭まること、組織風土作りは自分たちの責務でもあることを忘れてはなりません。
ある小規模の企業で起きた出来事は、このことを実感させられるものでした。“経営建て直し”のミッションを背に親会社から出向してきたA氏は早速、新機軸を打ち出し、精力的に采配しました。…半年を過ぎた頃、A氏のやり方に反旗を翻した部下たち複数名がCSR窓口にA氏の「パワハラ(パワーハラスメント)」を訴え、1年もたずに解任されました。それだけではありません。懸命に頑張った末の思いがけない結末にショックを受けたA氏は、心身不調に陥ってしまったのです。
本件から見えてきた問題の1つは、“改革”を実行するにはプロセスが肝心だということ、すなわち時間をかけてじっくり相手の話を聞き、こちらの考えをしっかり説明するという、情報のやり取りと共有の大切さです。性急かつ強引に指示を出してしまったA氏は周囲に不満の種を蒔き、反感を買ってしまいました。2つ目は、社員側の受け身の姿勢です。新顔トップのお手並み拝見、自分たちは協力しないぞ、という現状維持、保守保身の姿勢が、無責任な“被害者”を産む結果になりました。そうした背景に、理屈抜きの互いの感情 ――A氏には「建て直さなければならないダメ職場」、「できの悪い社員」という偏見が、社員側には「現場のことなど分かってないトップ」、「腰かけのヨソ者」という先入観―― があり、両者歩み寄ろうとする共働の姿勢が欠如していました。
“パワハラ加害者”であるトップの首を挿(す)げ替えて終わりにしてしまっては、大目標であった“組織建て直し”など、遠く先送りにされてしまうでしょう。先入観の排除を土台に信頼関係を回復した上で、「二度と”パワハラ加害者”という被害者を出さない」という、本件を通して得た大きな教訓を生かしてこそ、人も組織も成長できるのです。
(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2017.01)
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