ハラスメント相談の現場からVol.32 「易しい上司」とは?

Vol.32 「易しい上司」とは?

〇〇すぎる☆☆

最近、ネットニュースなどで『〇〇すぎる☆☆』という表現を目にすることがあります。大概〇〇には『可愛すぎる』『美しすぎる』など、誉め言葉が入り、☆☆には〇〇の形容詞と組み合わせるにはちょっと予想外のステイタスが入るのが定番のようです。そのパターンを当てはめてみると、「厳しすぎる上司」は意外でも何でもなく、「優しすぎる上司」ならば耳目を集めそうです。

日頃から部下をよく誉めている…実際は

厳しさにもいろいろありますが、「クールな指導」を見直し新しい手法を身に着けるため、私どもの研修受講となった某社管理職Zさんは、職場で怒鳴るわけでも威嚇するわけでもなく、物腰柔らかな紳士です。日常、部下に対してどのように接しているのか、ロール・プレイ(R・P)で見せてもらいました。Zさんによれば、「日頃から部下をよく誉めている」とのことだったので、誉めるR・Pをやってもらったのですが、実際には「よくやった」「頑張ったね」等の誉め言葉に続けて「君は△△が課題だから、今度はもっとしっかりやって欲しい」や「だけど」と逆接の接続詞を挟んで「〇〇にも気を配ってくれたら良かった」等、いろいろと注文(ダメ出し)がついてしまうのです。追加された後段の方がよりインパクトが強いため(Zさんにとっては前段よりも「真に伝えたいこと」であるため)、当然のことながら部下は「誉められた」と受けとめることは難しいでしょう。しかも、後段については「あー、またか」と落胆や苛立ちの感情に支配され、内容は耳に入ってきません。それでも、Zさんは「ちゃんと誉めたつもり」なのです。

伝わっているのは背景にある不安

Zさんにかぎらず、このパターンは管理職層には往々にしてみられる共通項です。簡潔かつ明確に伝えたいことを伝えることの難しさについて、ある受講者は「起こりうる様々なことを想定して話そうとすると話が長くなってしまう」と説明してくれました。つまり、背景にあるのは「もし……だったら」という漠然とした不安です。不安を解消するため、「あれも分かって欲しい」、「これも伝えておきたい」という意図が沸いて、それが逆に伝わりづらくさせるという皮肉な現象が起きているのです。

会話の意図は明確ですか?

「優しすぎる」必要はありませんが、「優しい上司」は「易しい上司」であり、表現が平易で会話の意図が明確、「業務上必要な伝えたいことを伝えられる上司」と言い換えることができます。

(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2017.10)

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