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ハラスメント相談の現場からVol.74 視線をちょっと上げて
Vol.74 視線をちょっと上げて
コロナ禍というトンネルの真っ只中にある今、私たちは“今日の感染者数”、“ワクチン接種の進展”などなど、日々刻刻のニュースとそのストレスから、いつになったら解放されるのでしょう。
弊社の行動変容プログラムへの参加者は、責任感が人一倍強くて真面目、組織への忠誠心が篤く、したがって仕事に“妥協”の文字はなく一生懸命取り組むという共通点がみられます。まだ“ハラスメント”、ましてや『働き方改革』など、今となっては当たり前に口にされる言葉が生まれる前の時代に自身にも周囲にも鞭打ってひたすら猛進してきた世代でもあり、滲みついた価値観、働きぶりが想像できます。それは、ある世代が錦の御旗として掲げ、それを拠り所、誇りとして社会を大きく動かしてきた時代の共同信仰といっても過言ではないでしょう。
参加者の多くは自らの言動を振り返る前に、たかだかこの10年ほどの間に起きている社会変革の大きなうねりに戸惑い、身動きがとれなくなっているのです。「世の中が変わったってこと。上手に合わせるしかない」と憤懣やるかたない気持ちを諦めの境地に無理やり変えて、こう表現する人も。私たちは実際に何が起きたかという“事実”よりも参加者の本心、本音に焦点を当てます。これまで組織一丸となって同じ方向に舵を切っていたはずの帆船が急に方針を変更した、キャプテンの指示に逆らったことのない自分だけ足元をすくわれ“悪者”にされた、という悔しい思いに大いに共感を覚えます。“本音”の整理、決着がつかなければ真に前へは進めません。実は、ほとんどの人は“本音”とは何か、自分の“本音”は何だろう、そもそもそんなこと考えたことがなかった、と言います。それはそうでしょう、これまで“美徳”とされてきたのは、気持ちを抑え込み、我慢、忍耐して頑張ることだったのですから。
目先をちょっと変えてこんな質問をすることがあります、「あなたは自分の5年後、10年後の人生を思い描けますか?」と。日々、足元の組織、仕事、部下、業務…、こんな単語ばかりが頭の中を占めていただろう人にとって大切なことは、これからの自分のトータルな人生をイメージし、自分の思い通りの設計図を描いてみることです。視野と時間を広げることで、これまで見えなかった、見てこなかった自分の一面が見えてきます。自分を大事にする視点をもつことによって、仕事や部下との付きあい方、家族や友人との過ごし方など周囲の景色も変化します。これぞインナーダイバーシティ®の絶大な効果です(Vol.62「彩り豊かなインナーダイバーシティ®の森へ」)
今、私たちはコロナ惨禍で目線がどんどん下がってしまう生活を強いられていますが、それでも視線をちょっと上げ、「私の5年後、いや10年後はかくありたい」と思い描くことは心の栄養剤になるはずです。
(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2021.06)
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