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ハラスメント相談の現場からVol.34 “急げ”の功罪
Vol.34 “急げ”の功罪
一年の終わりと新しい年の初めの数週間は、どうしてこんなにも慌ただしいのでしょうか。「あー、忙しい」、「もう時間がない!」とせわしなく街中を行き交う人たちを横目で見ながら「そんなに急がなくても良いのに…」と言いつつ小走りに先を急ぐ人も多いことでしょう。
研修等で自己認識や自己分析の手立てとするため、私たちの言動を突き動かす原動力となっている「ドライバー」と呼ばれるものを「ドライバーチェックリスト」という自己記入式の質問紙で測ることがあります。ドライバーの代表格には「急げ」、「完璧にやれ」、「努力せよ」、「相手を喜ばせよ」、「強くあれ」の5つがあり、どれも私たちが子どもの頃に親や周りの大人たちからしばしば受けてきた典型的なメッセージであり、年を重ねてもなお頭のどこかで指令を発していると考えられます。ちなみに、「ドライバーチェックリスト」は、良し悪しを判断するものではありません。
部下への厳しい指導で評判の営業部門管理職の男性が記入した「ドライバーチェックリスト」では、「急げ」の傾向が最も強く出ました。そのことを話題に振ると、「だって仕事は早いに越したことないでしょう」、「仕事で一番大切にしているのはスピード感」など、サクサク迅速に仕事をこなすことの大切さを熱心に説き始めました。若い頃、当時の上司に「仕事は早ければ早いほど良い」と徹底的に叩き込まれたとのことで、海外出張の折には帰りの機中でレポートを仕上げ、翌日一番に上司に提出するのが当たり前。現在の部下に当然、同じことを要求したら「数日かけてやっと提出してきたレポートの中身があまりにもお粗末」だったため、思わずレポートを投げつけてしまいました。この男性の仕事のやり方には、、確かに誰もが頷く仕事観の裏付けがあります。しかし、「自分にできたから部下にもできるはず」と、長年着慣れた洋服をそのまま部下に着せようとするようなやり方は得てしてうまくいかないものです。
果たして万事早ければ早いほど本当に有効なのでしょうか?「現在、部下が抱えている業務量とスピードのバランスはどうか?」、「部下のやり方の優れているところはどこか?」、「スピードアップを図る必要があるならどこから手をつければ良いか?」など、一度立ち止まり、「ゆっくり」考えることが大切です。
(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2017.12)
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