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ハラスメント相談の現場からVol.60 ”業務指示“を見直してみませんか?
Vol.60 ”業務指示“を見直してみませんか?
部下へ何度同じ指示を出しても、「指示通りの結果を持ってこない」、「見当違いなことをやる」などと日々ぼやいている管理職諸氏は少なくありません。1度、2度ならいざ知らず日常茶飯事、何度となく繰り返されると、どんなに我慢強く寛大な心の持ち主であっても、「いい加減にしろ!いったい何度言ったら分かるんだ?!」と語気荒く書類を突き返したくもなるでしょう。
ここに紹介するケースでは、その後もさらに同様のやり取りが延々続き、日頃は“仏(ほとけ)の“と冠されているA部長の堪忍袋の緒が遂に切れてしまいました。「バカ野郎!これだけ同じことを何回も言われたら、サルでもできる!」と書類を床に放り投げてしまったことから大事に発展しました。「サル以下」の烙印を押されたB社員から「パワハラ」で通報されたのです。A氏は、「二度と同じ轍は踏まない」と固く決心しました。その“妙案“について尋ねたところ、「部下に能力以上のことを期待したのが間違い」、「これからは能力に応じた仕事の与え方をするので大丈夫」と胸を張りました。さて、これを字義通りに受けとると、A氏が「サル以下」と査定したB社員には、“それなりの“業務を担当させる、ということなのでしょうか? 果してこのやり方は両者にとって良好な打開策なのでしょうか?
勝手に評価対象にされたサルも気の毒ですが、さらに不幸なのはB社員、そしてA部長です。B社員が毎回、指示から外れた結果しか出せなかったのは、ひとえに“B氏の能力の問題“だったのでしょうか? B社員からすると、「A部長の指示や説明が不親切で分かりにくい」、「質問したくても部長が多忙で聞くに聞けない」、「他業務も詰まっていて手一杯」などなど、A部長には伝えづらい理由(言い分)が山ほどあるかもしれません。そのことをA部長はちゃんと理解・把握し、解決しようと努めているでしょうか? そして忘れてならないことは、『B社員の“能力“をA部長が低く査定していることは、サルを持ち出すまでもなくB社員にはちゃんと伝わっている』ことです。口に出さなくとも、「能力が低い」、「できない」という心の声は日頃の態度で相手に伝わります。上司に“ダメ“のレッテルを貼られ、期待されないどころか諦められていることが分かったら、仕事に向かう姿勢や結果に反映されてしまうのも無理からぬこと。部下の能力を見積もる前に、まずは“業務指示“という基本のコミュニケーションを洗い直してみるのが“妙案“ではないでしょうか。
(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2020.03)
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