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ハラスメント相談の現場からVol.37 「頑張り」の対極は?
Vol.37 「頑張り」の対極は?
私たちの言動を突き動かす原動力となっている「ドライバー」※についての第四弾、今回は「努力せよ」の話です。
某電機メーカー管理部長Z氏(40代)は入社以来30年、文字通り仕事一筋、真面目に、勤勉に職責を全うしてきました。座右の銘は『努力は裏切らない』。部下と飲みに行くと、必ず口をついて出るのは、「手を抜くんじゃないぞ」、「怠けるなよ」という台詞。昨年からZ氏の下で働いているY氏(30代)は要領が良く、サクサクと手早く仕事を済ませると、保育園に通う長女の迎えのため週に2日は定時に退社します。Y氏の共働きの家庭事情について、もちろんZ氏は事前に知らされていますが、残業している同僚たちを尻目に「お先に失礼します」と、そそくさと退社するY氏を目にすると、内心面白くありません。実際、Y氏はルーチンはもちろん、突発的な業務もうまく段取りをつけソツなくこなしているため、Z氏も文句の付けようはないのですが…。Z氏のY氏への不満は、「仕事への向き合い方が物足りない」ことでした。
Z氏はドライバーチェックリストの結果は、予想にたがわず「努力せよ」が高得点でした。このドライバーが高い人は、「結果も大切だが、頑張っていること自体が重要である」という考えが強く、自分が頑張る分、周囲にも「頑張り」を強要してしまいがちです。そして、その「頑張り」はZ氏流に「定義」されているため、Y氏の「頑張り」(短時間でも仕事の質を落とさず、家庭と両立させる)は、Z氏の「定義」には入らないのでしょう。また、「努力せよ」が行き過ぎると、仕事の効率化の妨げや新しい取り組みや考え方の排除につながり、業務の停滞を招いて、過重労働の温床ともなりかねません。
努力することの対極は、怠けることではなく、力を抜く、つまりリラックスすることなのです。
(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2018.03)
- ※「ドライバー」の代表格の5つ「急げ」「完璧たれ」「喜ばせよ」「努力せよ」「強くあれ」は、私たちが子どもの頃に親や周りの大人たちからしばしば受けてきて、年を重ねてもなお頭のどこかで指令を発している典型的なメッセージと考えられています。
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